2006年09月16日

書評『開かれた文明』

 「ウリカちゃん」様から『開かれた文明』(佐藤浩一訳・図説中国文明史・第六巻)の書評を送っていただきました。





佐藤浩一さん訳の『開かれた文明』(図説中国文明史・第六巻)を読みました。
佐藤さんは中唐の会員で去年は幹事でしたね。

創元社、277頁、今月の十日に発行されたばかりです。
唐全体の文明史だから、文化芸術だけでなく、軍隊や交通など国家社会の各制度、農業、手工業、造船業などの各種産業まで、あらゆるものが一冊のコンパクトな本にまとめられています。
私は自分の狭い分野しか知らなかったので、唐という時代が全体としてどんな社会だったかを知る上でとても役立ちました。
唐文化はエキゾティックで豪華絢爛などと言いますが、実際あまりイメージできませんでした。でもこの綺麗なカラー写真を眺めて、ほんとにそれが実感できました。自分なんかがよっぽど単色の地味な生活しているなって感じです。

囲碁が唐の女性に好まれたと(166p,217p)ということはご存じでしたか?
私は「士君子のたしなむべき四芸〈琴棋書画〉の一つ」(平凡社世界大百科)という「平凡な」知識しか持ち合わせてなかったのです。士大夫がするものとばかり思ってました。でも唐では女性のなかに大流行していたんですね。確かに唐の女性は開放的で活発で馬にも乗ったから(165p〜)、囲碁もきっと旦那の手から奪い取ったのでしょうね。
杜甫の奥さんが成都で紙に囲碁の線を引いている詩「江村」がありますね。あれは夫や子供のためではなく自分の遊びのためだったんですね。きっと。

「個性の解放された女性たち」の項で、李林甫は五人の娘にカーテン越しに意中の男性を選ばせたとあります(167p)。
「口に蜜あり、腹に剣あり」と言われた李林甫にそんな開明的な部分があったなんてぜんぜん知りませんでした。
杜甫の甥っ子の杜位も、李林甫の娘を娶っていますから、もしかしたら杜位も権力者の娘に選ばれてしまった男だったのかもしれません。杜甫は制挙の試験を李林甫に落とされているので批判した詩を作っていますが、杜位には晩年に至るまでお世話になっています。でも杜甫の杜位に対する感情がなかなか微妙なんです。なんか関係有りそうな……。
でも李林甫には娘が25人もいたそうだから、杜位の奥さんがその夫を選んだ「五人の娘」だったかどうかわからないのですが。

佐藤さんのコラムが15項目もあり、要所要所でメリハリがきいていて、読むのが楽しいです。
唐代伝奇の李娃伝では、李娃が一度棄てた男を再生させようとしますね。本を買って科挙の勉強させますが、「まだ写本の時代なので値もはり、李娃は本代に金100両も支払っている」(211p)と書いておられます。
そこを読んでハッと思い出したのが、杜甫の詩です。
杜甫がまだ壮年のとき、何将軍の別荘に行って、とても喜んで、自分も書籍を売ってその隣の茅屋を買って住みたいなどと、またおちょうしのいいことを言ってます。
いまの私の書物をぜんぶ売っても、車一台買えないのに、杜甫の場合は家が買えたんですね。
佐藤さんが言うように、写本時代の書籍はむちゃくちゃ高かったんですね。だから本があると一財産だったのかもしれません。
だからこそ、杜甫が白帝城を去って三峡を下って江陵へ出立するとき、書籍が濡れることをわざわざ詩の中で心配していたんですね。書物が精神的に大事だったからだけではないのでしょう。いざとなれば高い値で売れる商品でもあったのでしょう。
……などと、そういうことを思わせるコラムでした。
佐藤さん、ありがとう!

ウリカちゃんより  08/23
posted by 2007年度幹事 at 01:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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