2024年度 第35回 中唐文学会のお知らせ(第2号)
残暑厳しき折、会員の皆様にはお元気でお過ごしでしょうか。第35回中唐文学会大会を以下のように開催いたします。またZOOMでのご参加も可能です。ふるってご参加くださいますようお願い申しあげます。
会 場 〒150-8440 東京都渋谷区東4-10-28
國學院大學渋谷キャンパス・総合学修館(6号館)地下1階6B13教室
日 程 10月11日(金)
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10:30 受付開始
11:00 開会の挨拶
*研究発表(発表25分、質疑応答10分)*
11:05 題 目:「李程と劉禹錫―『源氏物語』葵巻所引「有所嗟」二首其一を契機として―」
発表者:石村貴博(東京学芸大学)
質疑応答(11:30〜11:40)
11:40 題 目:「孟郊の復古手法―声律の視点から―」
発表者:徐 新源(京都大学人間・環境学研究科 博士課程)
質疑応答(12:05〜12:15)
***お昼休み(12:15〜13:15)***
13:15 題 目:「高適の詩における「仕隠の間」の人生観――漁樵のイメージを中心に」
発表者:劉 孟磊(神戸大学大学院人文学研究科博士1年)
質疑応答(13:40〜13:50)
13:50 題 目:「李紳「虎不食人」・「憶寿春廃虎坑」研究」
発表者:席 暢(慶應義塾大学文学部・慶應義塾大学女子高校)
質疑応答(14:15〜14:25)
***休憩(14:25〜14:35)***
14:35 題 目:「陋室銘」が劉禹錫の作品となった一端について」
発表者:荒川悠(筑波大学修士(文学))
質疑応答(15:00〜15:10)
15:10 題 目:「柳宗元の「天対」について―倣古表現と「天」観を中心に」
発表者:鈴木達明(愛知教育大学)
質疑応答(15:35〜15:45)
***休憩(15:45〜15:55)***
15:55 シンポジウム(全90分)
題 目:「『中興間気集』から見た詩史の諸相」
パネリスト: 大村 和人(徳島大学)
大橋 賢一(北海道教育大学旭川校)
福原 早希(筑波大学大学院博士後期課程)
コメンテーター: 紺野 達也(早稲田大学)
司会: 高芝 麻子(横浜国立大学)
***休憩(17:25〜17:35)***
17:35 総会(20分程度)
※昼食は学食(3号館1階、2階)をご利用いただけますが、授業日のため混雑いたします。会場内は飲食可ですので、あらかじめご用意することもご検討ください。添付の地図で最寄りのコンビニ等をご案内します。
※今年度も懇親会はなしとさせて頂きます。何卒ご了承いただきますようお願い申し上げます。
※同日、國學院大學博物館では企画展「文永の役750年 Part1 海底に眠るモンゴル襲来―水中考古学の世界―」を開催しております。ぜひお立ち寄りください(チラシを同封しております)。
お願いとお知らせ
同封の振込用紙から、会費のお振り込みと出欠席のご連絡をお願いします。
また、対面かオンラインのどちらかで参加なさる方は、以下の「申し込みフォーム」より申し込みをお願いいたします。オンラインの方にはのちほど、ZOOMのURLをお送りします。
※フォームは中唐文学会のブログにも掲載予定です。
https://forms.gle/f9QxkfiihwJ6Rzu16 ▼本会は、会費の納付で会員資格継続の作業を進めます。
振込用紙に金額をご記入の上、お振り込み下さいますようお願いします。
【振込先】 口座番号00100−8−631654 口座名称 中唐文学会
正会員3,000 円、準会員(会報不要の方)1,000 円
学会出張等に必要な書類がございましたら鈴木(stakayoshi@kokugakuin.ac.jp)までお知らせください。
会場(國學院大學渋谷キャンパス)へのアクセス
渋谷駅(JR各線・地下鉄各線・東急各線・京王井の頭線)から徒歩約13分
渋谷駅(JR各線)新南口から徒歩約13分
都営バス(渋谷駅東口バスターミナル54番のりば 学03日赤医療センター行)「国学院大学前」下車
表参道駅(地下鉄半蔵門線・銀座線・千代田線)B1出口から徒歩約15分
恵比寿駅(JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン、地下鉄日比谷線)から徒歩約15分
都営バス(恵比寿駅西口ロータリー1番のりば 学06日赤医療センター行)「東四丁目」下車
(運賃180円・IC178円)【恵比寿駅から3番目の停留所、所要時間約10分】
研究発表要旨
石村貴博「李程と劉禹錫―『源氏物語』葵巻所引「有所嗟」二首其一を契機として―」
『源氏物語』葵巻の「雨となり雲とや成りにけん、いまは知らず」は、劉禹錫「有所嗟」二首其一に基づく。この詩には白居易の報酬詩「和劉郎中傷鄂姫」があり、「姫は鄂人なり」と注する。鄂姫については⑴「劉禹錫の愛人」「側室」⑵「劉禹錫の亡妻」⑶「劉禹錫の友人李程の愛姫」の三説ある。多くが⑴を支持するが、劉禹錫の伝記や家族構成をふまえると疑問が残る。⑵は詩の制作時期や内容の面から承服できない。⑶李程の愛姫かどうかは不明だが、劉禹錫と鄂姫の出会いには李程がかかわっている可能性が高い。よって本発表で李程と劉禹錫との交遊を確認し、改めて三説に検討を加え、鄂姫について私見を述べたい。
徐 新源「孟郊の復古手法―声律の視点から―」
孟郊は、唐代の著名な詩人であり、その独特な古体詩の風格により文学史上で重要な地位を占めている。本研究は、孟郊が詩において用いた声律の復古手法を探り、唐代五言古詩の発展に対する理解を深めることを目的としている。彼の詩作を全面的に統計・分析した結果、押韻、上尾、平仄の運用において明確な復古傾向が見られることがわかる。孟郊はしばしば隣韻や不規則な換韻を使用し、多くの詩で上尾を犯し、律句を避け、平四連や平五連といった極端な非律句を好み、また句式において散句を好むなど、漢魏楽府古詩の継承と発揚を示している。孟郊の声律復古手法は、彼の深い古典への情熱を示すだけでなく、唐代詩人の声律における革新と探求を反映している。
劉 孟磊「高適の詩における「仕隠の間」の人生観――漁樵のイメージを中心に」
高適は初めて「漁樵」という言葉を頻繫に用いた詩人として知られており、現存する作品には9例にわたって見られる。本発表では。高適の詩の「漁樵」は、その人生を象徴する重要なイメージと見なせることを指摘する。唐以前の知識人は貴族・地主階級が主流であり、自ら漁業と木樵のような労働に従事することは殆どなかった。しかし、高適にとっての「漁樵」は、梁宋での20年以上続いた晴耕雨読の生活の実態を意味するのみならず、その人生観や価値観の変遷を確認できる資料でもある。高適は詩中において、梁宋に伝えられる梁園の文人や荘子の故事を踏まえつつ、漁樵を通して、仕隠の間での内なる平安を維持しようとする試みを示している。
席 暢「李紳「虎不食人」・「憶寿春廃虎坑」研究」
李紳が寿州刺史を務めた時期に創作した詩「虎不食人」と「憶寿春廃虎坑」は、彼の治績を宣伝する目的で作られたものである。二首とも「虎」を主題として展開されているが、これらの詩に登場する「虎」は、前代や同時期の他の詩人の詩における「虎」と比べてどのような特徴を持っているかを確認した。また、李紳が治績を宣伝するために「虎」を用いた理由、そしてなぜ寿州刺史在任中に「虎」を題材にした詩を集中的に作ったのかについても、「劉昆除虎」の故事や牛李党争の状況などと関連付けて分析した。
荒川悠「陋室銘」が劉禹錫の作品となった一端について」
劉禹錫「陋室銘」(『劉禹錫集』未収載)は卞孝萱氏の指摘以降、劉禹錫の作品ではないとみるのが定説となっている。だが今なお「陋室銘」は劉禹錫の作品として読み継がれている。それは「陋室銘」の読み手が内容から劉禹錫らしさを違和感なく受け止めているためである。遅くとも北宋までに「陋室銘」が劉禹錫の作だと認知されていたのであれば、劉禹錫らしさとはいかなるもので、読み手はどのようにそのイメージを「陋室銘」から見出したのだろうか。
「陋室銘」の内容について改めて見直すことを出発点に、当時広く読まれていた白居易との唱和詩や、「陋室銘」の碑を書写したとされる柳公権について比較検討することで、「陋室銘」が劉禹錫の作品となった一端を議論したい。
鈴木達明「柳宗元の「天対」について―倣古表現と「天」観を中心に」
柳宗元「天対」は『楚辞』「天問」に答えるという形式で書かれた作品である。内容・形式とも『楚辞』の模倣文体である「騒体」の作品と言ってよいが、巻十四の「騒」や巻十五の「弔文」に収められた「騒体」の諸作品とは、語彙・文法・韻律の各面において顕著な違いが見られる。その特徴を分析し、使用の意図について考えを述べたい。また、従来「天対」は柳宗元の唯物主義・合理主義を示す資料として参照されてきたが、その「天」がどのような形象として把握されているか、また主宰の「天」とおぼしき要素が残ることとの整合性など、なお考えるべき問題は多い。表現の分析の成果も踏まえて、これらについても検討を加えたい。
シンポジウム要旨
【『中興間気集』から見た詩史の諸相】
【シンポジウム趣旨】
『中興間気集』は、高仲武によって編纂された、いわゆる唐人選唐詩の一種である。同書は盛唐から中唐への移行期に編まれたアンソロジーとしては現存唯一のもので、同時代の詩人たちの作を収め、安史の乱直後の詩壇に対する同時代人の論評を多く掲載する点でも、他の総集にない重要な価値を持つ。
本シンポジウムでは、3名のパネリストがそれぞれの専門領域の見地から『中興間気集』に関連する報告を行い、さらにコメンテーターによる講評、会場の諸氏との意見交換等を介して、唐代詩史、ひいては中国詩史の流れにおける大暦詩壇の意義を改めて考えてみたい。
なお、本シンポジウムは、科研費基盤研究(C)「安史の乱をめぐる文学の研究」(研究代表者:高芝麻子、研究課題番号22K00361)、および科研費基盤研究(C)「『中興間気集』の研究――盛唐から中唐への転換点という視座から」(研究代表者:遠藤星希、研究課題番号23K00341)による研究活動の一環である。
「孟雲卿詩の『中興間気集』収録の意義と中国文学史のゆくえ」
大村 和人
本発表者はこれまで魏晋南北朝文学を主に研究してきたが、本共同研究においては孟雲卿を担当している。彼の経歴や生没年は定かではないが、幾つかの資料によれば、盛唐から中唐にかけての詩人と考えられる。『中興間気集』の総体的な収録作品の傾向から見れば、この詞華集に収録される彼の作品は異質に見える。また、ほぼ同時期に元結が編纂した『篋中集』にも彼の作品は収録されているが、その内容の傾向も『中興間気集』のそれとは異なる。本発表では『中興間気集』が収録する孟雲卿の作品を分析することから出発し、この詞華集に彼の作品が収録されていることの背景や意味を、魏晋南北朝時代以来の文学思潮と関連付けながら考えてみたい。
「『中興間気集』における銭起」
大橋 賢一
『中興間気集』は上下巻からなるが、各巻頭に位置づけられる詩人は、銭起と郎士元である。この配置から、高仲武が銭起を郎士元よりも優れた詩人と認めていると言えよう。また銭起の論評において「右丞の没後、員外雄為(た)り」というように、高仲武は王維没後、詩壇の筆頭を銭起とみなすが、このことは銭詩の評価が当時際立っていたことを裏付ける。
意外にも銭起は、杜甫と生年が五歳ほどしか離れていないと考えられ、その差は李白と杜甫の差ほどもない。銭起は、他の中唐の詩人がそうであるように、杜詩ほど後代に与えた影響はないが、高仲武は、銭起を同時代の文壇の旗手とみなしていた。本発表では、主に『中興間気集』中の、銭起の論評、及び所収詩を検討することで、その理由について考えてみたい。
「韓翃詩における謝霊運の継承 高仲武評を出発点として 」
福原 早希
大暦十才子のひとりに数えられる韓翃は、『中興間気集』巻上の12番目に7首の作品が収録されている詩人である。高仲武による韓翃の論評に「其の比興は劉員外(報告者注:劉長卿を指す)よりも深く、筋節は皇甫冉よりも成るなり」とあるように、高仲武による韓翃の評価は低くない。注目すべきは、高仲武が「繁富」「芙蓉出水」といった、謝霊運の詩に対する批評にみえる言葉を用いながら、韓翃の作品を評価している点である。韓翃の作品を概観すると、謝霊運および謝霊運詩に言及する例が散見され、韓翃自身も謝霊運のことを少なからず意識していたようだ。本発表では、『中興間気集』における韓翃の評および収録作品を検討することで、高仲武の韓翃詩に対する見方について卑見を述べたい。
当日の会場に関して
大会当日、会場となる國學院大學では授業をおこなっているため、会場を変更する可能性があります。変更となった場合は、中唐文学会ブログにて告知を行いますので、予めご確認ください(10月7日(月)ごろには確定する見込みです)。当日は看板による会場へのご案内もいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
中唐文学会ブログ (
http://ztw.seesaa.net/) 國學院大學ホームページ
https://www.kokugakuin.ac.jp/ 各問い合わせ先
大会関連: 鈴木崇義(stakayoshi@kokugakuin.ac.jp)
幹事(会報): 大山岩根
幹事(会計・名簿管理): 戸留美子
幹事(広報): 早川太基
以上